【2022年最新版】相続登記の義務化はいつから?罰則を含めた概要を解説

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亡くなった人から土地や建物を相続した場合、相続登記が必要になります。これまでは相続登記をしなくても特段、罰則はありませんでした。しかし、2021年の法改正により相続登記が義務化されることになりました。

この法改正は2024年4月1日から施行され、違反した場合は10万円以下の過料が科せられます。これから相続する不動産も、過去に相続した不動産も対象になるため、心当たりがある方は早めに対処しましょう。

本記事では、相続登記とはどのような手続きなのか、放置するとどうなるのかを解説していきます。

相続登記とは?

相続登記とは?

亡くなった人から土地や建物などの不動産を相続した場合、その不動産の名義を相続した人の名義に変更する必要があります。これを「相続登記」と言います。

この手続きを怠ってしまうと、不動産の所有者が誰か分からなくなるため、争いの火種になりかねません。また、その不動産を売却したくても、名義が故人のままでは売ることができません。

トラブルを未然に防ぐためにも、相続登記は必ず行いましょう。

相続登記が義務化される背景

相続登記が義務化される背景

これまで、相続登記は任意の手続きでした。そのため、手続きをしなくても当事者には特に不利益がありませんでした。むしろ、相続登記に必要な書類を用意したり、費用がかかったりするため、手続きをしない人が増えてしまいました。

これが後に、所有者不明土地の増加を招く要因となってしまいました。

国土交通省によると、所有者不明の土地面積は約410万ha(2016年時点)に相当します。これは九州の土地面積368万haよりも広大です。所有者が分からないため、これだけの土地が活用できずに放置されています。

所有者不明土地はもったいないだけでなく、危険も伴います。

所有者不明の建物は適切に管理されていないケースも多く、倒壊や害虫問題、犯罪に利用されるリスクを孕んでいます。また、東日本大震災や熊本地震の復旧工事の際に、土地の所有者が特定できず、復旧作業が難航したという大きな問題もありました。

このようなことから、所有者不明土地を増やさないために、相続登記の義務化が施行されることになりました。

相続登記の義務化によって改正される内容

今回の法改正によって、相続登記に関するルールが下記のように変わりました。

  • 不動産を取得してから3年以内の登記が必要
  • 所有者の氏名や住所変更があった場合に変更登記が必要
  • 土地の所有権放棄ができる

では、それぞれ詳しく解説していきましょう。

不動産を取得してから3年以内の登記が必要

不動産を相続してから3年以内に相続登記をしなくてはなりません。もし、これに違反した場合は10万円以下の過料が科せられます。

もしも、3年以内に相続登記ができそうにない場合は、「相続人申告登記(仮称)」と「法定相続分の相続登記」という方法があります。

相続人申告登記(仮称)

相続人申告登記は今回の法改正で新しく作られた制度です。

3年以内に相続登記ができそうにない場合、法務局に「自分が相続人である」旨を申し出る制度です。これにより、一時的に相続登記の申請義務を果たしたことになります。

現時点では、必要書類や手続き方法などの詳細は未定ですが、相続人が単独で申請でき、必要書類の提出も簡素化される見込みです。正式な相続登記よりも手続きの負担が軽くなるので、3年以内に手続きができない場合は利用されるといいでしょう。

但し、これは仮の登記です。この申請をしただけでは、不動産を売却することはできません。後日、遺産分割協議などを行い、正式に相続人を決めなくてはいけません。そして、相続人が確定した日から3年以内に正式な相続登記をしなくてはいけません。

法定相続人全員の名義共有登記をする

期限までに相続登記ができない場合は、「法定相続人全員の名義共有登記」をすれば相続登記の義務を果たしたことになります。つまり、相続人全員の共有名義にしておくという方法です。

ただし、「とりあえず」この方法をとるのは避けたほうがいいでしょう。

後日、話し合いをして正式に相続人が決定した際に、もう一度、登記をする必要があります。これでは、手間と費用が二重にかかってしまいます。

また、不動産を共有名義のままにしておくと、売却や建て替えの際に名義人全員の同意が必要になるため、別のトラブルを招きかねません。これらのデメリットを踏まえた上で、方針を決めましょう。

所有者の氏名や住所変更があった場合に変更登記が必要

相続登記の義務化にあわせて、所有者の住所・氏名の変更登記も義務化されることになりました。所有者として個人や法人の氏名・住所に変更が発生したときは、2年以内に変更登記を行なわなければなりません。この期限内に手続きを行なわなかった場合は、5万円以下の過料が科せられます。

土地の所有権放棄ができる

相続した土地が、「売却が難しい」「使い道がない」と言った場合、所有しているだけで固定資産税や管理の手間がかかるなど、負担になります。

改正前の法律では、不要な土地だけを相続放棄することはできませんでした。土地の他に預貯金や株式など、他に相続したい財産がある場合は、土地も含めてすべて相続しなくてはいけませんでした。

これが、法改正により所有権を放棄して土地を国に帰属すことが可能になりました。これにより、不要な土地の所有権だけを放棄し、他の財産は相続できるようになりました。

ただし、下記の条件に当てはまる土地は所有権を放棄することができません。

  • 建物が建っている土地
  • 担保権、又は使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
  • 通路などに使用されている土地
  • 鉛やヒ素と言った特定有害物質で汚染されている土地
  • 土地の境界があいまい、その他所有権の存否、帰属や範囲に争いがある土地
  • 崖が含まれているなど、管理に費用又は労力を要する土地
  • 樹木や工作物、車両などが地上にある土地
  • 地下に除去が必要なものが埋まっている土地
  • 近隣の土地の所有者と争訟しなければ使えない土地
  • 管理、処分するために費用又は労力がかかる土地

また、上記の条件を満たしていても、10年分の土地の管理費を払わなくてはいけないため、ややハードルが高い制度です。

相続登記を放置した場合のリスク

相続登記を放置した場合のリスク

土地や建物といった不動産を相続したときに、相続登記が面倒だからといってそのまま放置してしまうと、様々なリスクがあります。どんなことが起こるのか、具体的に見ていきましょう。

相続した不動産を売ったり担保に入れたりできない

相続登記をして不動産の名義をご自身の名義に変更しておかないと、相続した不動産を売却したり担保に入れたりすることができません。

相続した不動産を有効活用するためにも、相続登記は早めに行いましょう。

遺産分割協議がまとまりにくくなる

相続登記を放置したまま年月が過ぎると、相続人の死亡などにより、親から子どもへだけではなく、孫やひ孫の世代へと相続人の数が増えてしまいます。

一般的に、相続が発生した場合、相続人全員で話し合いの上、誰がどの割合で財産を相続するかを決定します。これを遺産分割協議と言うのですが、相続人の数が多ければ多いほど、話し合いがまとまりにくくなります。

孫やひ孫世代など、関係が薄い相続人がいる場合は、居場所を探し出して連絡するだけでも一苦労です。

また、相続人の中には認知症の高齢者や未成年の相続人がいることも考えられます。この場合は成年後見人や代理人を選任する必要があるため、相続の手続きがどんどん複雑になっていきます。

代襲相続を経て、相続人の数が増えてしまいます。

必要書類を集めることが困難になる

相続登記をするには亡くなった方の住民票や戸籍謄本が必要です。しかし、これらの書類には保存期間が定められています。

住民票(除票)及び戸籍謄本は150年と決まっており、この期間が過ぎて書類を処分されてしまうと必要な書類が揃えられず、手続きが難航してしまいます。

※住民票(除票)については、令和元年6月20日以降から保存期間が150年になりましたが、それ以前のものについては保存期間が5年です。

相続登記の申請方法

相続登記の手順

  1. 相続不動産を特定する
  2. 登記簿を取得する
  3. 戸籍・戸籍附票を取得する
  4. 登記記録上の住所と死亡時住所の確認する
  5. 遺産分割協議を行う
  6. 登記申請書を作成する
  7. 管轄法務局へ申請する

※遺言書があり、その通りに財産を分割する場合は5)遺産分割協議は不要です

相続登記に必要な書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  • 被相続人の戸籍附票
  • 法定相続人全員の戸籍謄本
  • 新たに登記名義人となる相続人の戸籍附票
  • 固定資産評価証明書or固定資産税課税明細書

相続登記の流れと必要な書類はざっとこのような形です。上記の他、必要に応じて遺言書や遺産分割協議書、印鑑証明書、相続放棄申述受理証明書などケースバイケースで必要な書類が異なります。

相続登記は司法書士にお任せください

相続登記をご自身で行うのはかなり負担が大きいでしょう。故人の戸籍謄本一式をそろえるだけでもかなり手間のかかる作業です。一つ一つ時間をかけて調べながら進めるには、根気が必要です。平日の昼間に役所や法務局に行く時間がない方、仕事が忙しい方も多いでしょう。

司法書士は不動産登記の専門家です。相続登記でお困りならお気軽にご相談ください。手続きを間違いなく、スムーズに進めることが可能です。

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