近年、少子高齢化の影響により空き家が急増しています。売却もできず、処分もできず、放置状態になっているケースも多く、危険な空き家の増加が社会問題となっています。
危険な空き家は様々なトラブルを招くため、所有しているだけでリスクを伴います。そこで本記事では、空き家問題でどのようなトラブルが起こるのか、どのように対処すればいいのかを解説します。
空き家を放置するとどんなトラブルに巻き込まれる?
立地や建物の老朽化の問題から、放置状態の空き家が増加しています。このような空き家が具体的にどのようなトラブルを招くのか、詳しく解説していきます。
犯罪に巻き込まれる
放置された空き家は犯罪の温床になりやすいです。例えば、不審者が勝手に住み着いたり、不法投棄などの犯罪行為に利用されたりなど、治安の悪化につながります。
そして、最も懸念されるのが放火犯の標的になることです。空き家には枯れ草や紙ごみなど火種になるものが多く、人目に付きにくいことから、放火の被害に遭うリスクが高くなります。
放火などそうそう起こりえない凶悪事件に思えますが、総務省の統計によると、2019年におこった火災の内、約12.1%が「放火」もしくは「放火の疑い」が原因です。火災は近隣の家屋にも被害を及ぼす可能性もあり、人の命に関わる重大事件につながります。
倒壊の危険性がある
放置されている空き家は老朽化が進みやすいため、地震や台風などの自然災害によって倒壊する危険性があります。とりわけ1981年以前に建てられた住宅は、旧耐震基準で建てられていることが多いため、さらにそのリスクが高まります。
また、心配なのは大きな災害だけではありません。ちょっとした強風や大雨で屋根瓦や外壁が落下し、けが人が出れば所有者に損賠賠償責任が発生します。近年のゲリラ豪雨や竜巻被害の増加を考えると、他人ごとではありません。
固定資産税を払い続ける
たとえ空き家でも、固定資産税を払わなくてはいけません。
通常、不動産の種別が住宅であれば、住宅用地の減額特例によって固定資産税が減額されます。しかし、市町村から危険な「特定空き家」と認定されると、この特例が適用されず、最大で6倍の納税義務を負う可能性があります。
市町村によって強制的に解体されてしまう
倒壊の危険性があるなど、近隣住民への被害が懸念されるほど放置された空き家は、市町村によって強制的に解体されてしまうことがあります。そして、その解体費用は空き家の所有者に請求されます。
こうした処分を行政代執行と言い、行政からの繰り返しの指導を放置した、悪質な空き家所有者に対して執行されるものです。売却の手間や解体費用を惜しんで空き家を放置すると、このような処分を受けることになります。
不動産価値が下がる
放置された空き家は、不動産の価値がどんどん下がっていきます。管理が行き届いていない空き家は劣化や老朽化が進みやすく、余計に買い手が見つかりにくくなるという悪循環に陥ります。
たとえ買い手が見つかったとしても、売却価格も下がりますし、修繕費用などの負担も増えてしまいます。
近隣の迷惑になる
上記でご説明した空き家問題は、空き家の所有者のみならず、近隣住民の迷惑にもなりえます。犯罪に利用されそうな空き家は、その地域の治安悪化を招きます。また、放火や倒壊のリスクは、近隣の住民にとって生命の危機にも繋がりかねないものです。
犯罪だけでなく、空き家に放り込まれたゴミが散乱したり、空き家自体が害虫の温床になることもあります。衛生上の問題や景観などの観点から近隣住民に迷惑をかける可能性があります。
なぜこのような危険な空き家が増えたのか
先述したように、空き家の放置は近隣の方に迷惑をかけてしまいます。最悪の場合は、人の命をも巻き込んでしまいます。また、固定資産税の負担や行政代執行などのご本人が被るリスクも大きいでしょう。
では、なぜこのような空き家が放置され、増えているのでしょうか。
高齢者の転居
高齢になった方が今まで住んでいた住宅を離れ、老人ホームや介護施設に入ったり、子供の家や高齢者向けのマンションなどに住まいを移したり、といったことが要因としてあります。
実家を相続したが活用できない
もう一つの要因が「相続」です。親が亡くなり、その住宅を相続したものの活用できず、そのまま放置されているケースも多いです。
家を相続しても、すでに別の場所に生活基盤があれば、その家に住むこともなく空き家の状態になってしまいます。また、売却したくても立地条件や建物の状態が悪く、買い手が見つからない、他の活用方法も無いといったことも考えられます。
さらに他にも、「物置にしている」「特に困っていない」「将来使うかもしれない」などの理由から空き家が放置されているのが現状です。
空き家トラブルを回避する方法
空き家トラブルを避けるには、どのように管理するのかを早めに決めることです。手放した方がいいのか、そのまま所有し続けるのか、どのような方法があるのか解説します。
売却する
空き家問題の最も単純な解決方法は売却することです。売却によって一定の売却益が入ってくる上に、その後の管理の手間や維持費が不要になります。
また、不動産を売却して得た利益に対して譲渡所得税という税金がかかり、この税金を軽減できる特別控除があります。ただし、適用には期限がありますので、早めに動かれることをお勧めします。
居住用財産の3,000万円特別控除
住居用としてご自身が住んでいた家屋を売却する場合、住まなくなってから3年後の12月31日までに売却した際に、最高3,000万円を控除できる特例です。
空き家の3,000万円特別控除
亡くなった方の住居用の家屋が空き家になった場合、相続開始日から3年後の12月31日までに売却すれば、最高3,000万円を控除できる特例です。
この特別控除は、旧耐震基準で建てたられた、危険な空き家の増加が社会問題になっており、その対策として設けられました。これは令和5年(2023年)12月31日までの特例です。
相続税の取得費加算の特例
不動産を相続した場合、相続開始日から3年10か月以内に売却すれば、相続税の一部を取得費に上乗せできる特例です。
この特別控除は、同じ不動産に対して相続税と譲渡所得税を2重に課税すると、土地を相続した方の負担が大きいため、相続から3年以内なら、すでに支払った相続税分を控除するという仕組みです。
これらの譲渡所得税の控除には、様々な規定が設けられています。詳しくは下記の記事を参照してください。
賃貸として活用する
売却しない場合は、空き家を賃貸物件として活用し、居住者を募集するのもひとつの方法です。これによって空き家は「住居」として法的に認められるので、固定資産税が軽減される上、家賃収入を継続的に得ることができます。日常レベルでの管理やメンテナンスを貸借人に任せられるのも大きな利点です。
適切に管理しながら所有し続ける
「将来、自分が住みたい」「思い出が詰まっている」などの理由から処分に踏み切れない場合は、空き家管理をしっかり行いながら所有し続けることになります。
ただし、所有しているだけでも固定資産税は発生し続けますし、自分で管理するにしろ業者に委託するにせよ、空き家管理には一定のコストがかかることは留意しておいた方が良いでしょう。
相続放棄する
空き家を相続しても売却もできず、賃貸などにも活用できないのに、固定資産税や維持・管理のコストが負担になるのであれば、相続放棄も有効な手段です。
ただし、相続放棄は相続の発生を知ってから3ヶ月以内に手続きする必要があります。また、一度相続したら、その後に相続放棄をすることはできません。さらに、他の相続財産も放棄することになりますので、慎重に検討しましょう。
※相続人全員が相続放棄をした場合はどうなるのか?
相続人全員が相続放棄をした結果、物件の所有者が誰もいなくなってしまった場合、相続放棄をしても管理義務だけが残る可能性があります。そうなると、所有権もないのに空き家管理のコストが発生してしまいます。
その場合は、国庫に帰属させたり、自治体に寄付したりすることも選択肢の一つです。売却益などは入りませんが、無為に空き家の所有を続け、トラブルのリスクや管理コストを抱え続けることは避けられます。
不動産の相続はアヴァンス法務事務所におまかせ下さい
不動産を売却するにしても、所有するにしても、相続登記が必要になります。また、遺言書の有無によっては遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しなくてはいけないなど、相続には様々な法的手続きが必要になります。
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