不動産の相続はどのように分ければいい?

不動産相続

相続財産の中に不動産が含まれていると、相続トラブルの原因になりやすいです。不動産は物理的に分けることが難しく、また、処分するか残すか、相続人それぞれの意見が分かれてしまうこともあるでしょう。

この記事では、不動産の分割方法と生前からできる対策について解説します。

不動産の相続がなぜトラブルになりやすいのか

不動産の相続がなぜトラブルになりやすいのか

不動産の相続がトラブルになりやすい理由は、均等に分けることが難しいからです。特に、相続財産の大部分を不動産が占めている場合は、遺産分割の話し合いが難航しやすいです。相続人の数が多ければなおさらです。

例えば、被相続人(亡くなった人)が住んでいた住宅を3人の子供が相続するとします。この場合、単純に土地を3分割して相続すれば平等ですが、どう考えても現実的ではありません。

よほど広い土地をお持ちであれば別ですが、一般住宅の広さで考えると、土地を細かく分割してしまうと実用性がなくなってしまいます。さらに、それぞれの区分の評価額が異なれば相続人同士の不満へとつながります。

このように、不動産はお金のように分割することが難しいため、相続トラブルになりやすいです。相続財産を均等に分けられず、相続人同士の不公平感から、トラブルの火種になってしまいます。

不動産の相続トラブルと聞くと、大きな資産をお持ちのご家庭で起こるように思われますが、むしろ一般のご家庭の方が起こりやすいです。相続財産がご自宅の不動産以外に目立った財産がなく、相続人同士の公平性を保つことが難しいケースが多いです。

不動産の分割方法は4つ

不動産の分割方法は4つ

①現物分割

現物分割とは、1人の相続人が1つの不動産をそのままの形で相続する方法です。

例えば、亡くなった親の住宅を兄弟3人の内、長男A夫が相続した場合です。

相続手続きがシンプルになるのがメリットですが、相続人同士の不公平感を招くため、遺産分割の話し合いが難航する可能性があります。

この方法は、同居していた配偶者や子供がそのまま住宅を相続するなど、他の相続人の理解が得られそうな場合や、他の相続財産を分配することで、相続人同士の公平性を保てるのであれば有効な手段でしょう。

また、不動産を分筆によって、複数の土地に分ける方法も現物分割に含まれます。この場合は、土地が小さくなり、利用用途が限られたり、土地の価値が下がることもあるため、慎重に判断してください。

②代償分割

代償分割とは、不動産を相続した人が、他の相続人へ代償金を支払う方法です。

例えば、1,200万円の住宅を兄弟3人の内、長男A夫が相続したとします。そしてA夫は残り2人の相続人B夫とC夫に400万円ずつ代償金支払うことで精算します。

この方法は、不動産を相続する人に代償金の支払い能力があれば有効な手段です。

③換価分割

換価分割とは、不動産を売却して得た売却益を、相続人同士で分ける方法です

公平に財産を分割できるのが特徴で、トラブルになりにくいです。特にデメリットもなく、相続人全員が売却に同意していれば、有効な手段です。

④共有

不動産を分割せずに、相続人同士で共有する方法です。

一見、平等に相続したように見えますが、後々のトラブルに発展しやすいため、注意が必要です。

共有状態の不動産は売却や取り壊し、リフォームなどをする場合、共有者全員の同意が必要になります。売却したくても、誰か一人でも反対すればできません。また、将来的に権利関係が複雑になることもデメリットです。

例えば、兄弟姉妹で不動産を共有したとします。その時は問題なく共有できたとしても、兄弟姉妹の誰かが亡くなった時に、相続によってその配偶者やその子供も共有者になる可能性があります。共有者が増えると、権利関係が複雑になってしまい収拾がつかなくなります。

そのため、共有分割は最後の手段として採用されるケースが多く、できれば避けたほうが望ましいです。後から共有状態を解消する、共有物分割請求をすることもできますが、どのように分割するか話し合いがまとまらず、トラブルに発展することもあります。

生前にできる相続トラブルの回避方法

生前にできる相続トラブルの回避方法

相続財産に不動産が含まれていて、相続人同士で均等に分けることが難しいなら、今のうちに対策をされたほうが良いでしょう。

遺言書を残す

相続は基本的に故人の意思が尊重されます。あらかじめ誰が不動産を相続するのか遺言書で書き残しておけば、基本的に遺言書の内容通りに相続が行われます。

ただし、遺留分には注意してください。遺留分とは、相続人が最低限相続できる財産の割合のことで、民法によって定められています。遺留分を侵害しているとトラブルの火種になりかねません。

例えば、1,200万円の住宅を同居していた長男A夫が相続し、残りの兄弟B夫とC夫は何も相続できなかったとします。この場合、B夫とC夫には財産の1/6である200万円をA夫に請求する権利があります(遺留分侵害額請求)。

遺留分を請求されたA夫は、B夫とC夫にそれぞれ200万を支払わなくてはいけません。遺留分を払えない場合は、住宅を売却して支払いに充てるしかありません。これではA夫は住む家を失ってしまいます。

このように、遺留分に相当する財産を残せない相続人がいる、どうしても不平等な分け方になる場合は、遺言書に添付できる「付言事項」を残しておくといいでしょう。

この付言事項は自由に作成できるため、「長年、介護をしてくれた長男に自宅を残したい」「今後の妻の生活を守りたい」など、財産の分け方の理由や家族への感謝の気持ちを伝えることができます。

これには法的な拘束力はありませんが、相続人同士のトラブルを防げるかもしれません。

遺言書の書き方については下記の記事を参照してください。

生命保険を活用する

生命保険の保険金を代償分割の資金にしたり、遺留分の請求分に充てたりと、相続人同士の不平等を調整することができます。

例えば、先ほどのA夫の場合、生命保険金をB夫とC夫の遺留分に充てて解決を図ることが可能です。

まとめ

今回の記事では、不動産の分け方を解説しました。分割方法によっては別のトラブルを招いてしまいますので、どの方法を選ぶか慎重に検討しましょう。特に共有分割は後になって問題が表面化することがありますので、よく考えて選択してください。

そして、相続のトラブルを防ぐには遺言書の存在が有効です。仮に、財産を平等に分けられなかったとしても付言事項を書いておくことで、相続トラブルのリスクを軽減できます。また、代償金に充てられるように生命保険に加入されておいても良いでしょう。

相続財産が自宅の不動産と預貯金というご家庭も多いのではないでしょうか。つまり、相続トラブルは他人事ではありません。大きな財産を持っていないからと言って安心してはいけません。むしろ、財産を公平に分けにくくなることが、トラブルの原因になるのです。

相続に関する悩みや不安があれば、アヴァンス法務事務所にご相談ください。

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