相続財産に何があるのか分からない、財産調査の方法を解説

遺産相続

財産調査とは被相続人(亡くなった人)の財産について調べることを言います。相続が発生したら、できるだけ早く取り掛かったほうが良いでしょう。

財産調査をしっかり行わないと、その後の相続手続きが進まないだけでなく、相続後にさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。

この記事では、財産調査の方法と、調査を怠るとどんなトラブルになるのか、解説します。

相続財産にはどんなものがあるのか

相続財産にはどんなものがあるのか

相続財産は預貯金などのプラスの価値の財産と、借金などのマイナスの価値の財産を合わせたすべての財産を指します。一般的に考えられるのが下記の財産です。

プラスの財産

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式
  • その他動産

マイナスの財産

  • 住宅ローン、カーローン
  • 借金
  • 未納の税金、医療費、家賃、後払いなど

相続財産の調査方法

相続財産の調査方法

預貯金の調査方法

どこの銀行にお金を預けていたのか調査するには、まずは遺品の中からキャッシュカードや通帳を探しましょう。それらが見つからない場合は、自宅や勤務先、最寄り駅に近い金融機関など、お金を預けていた可能性が高い銀行に当たりをつけて問い合わせていくしかありません。

預貯金の調査はとても手間がかかる作業ですので、司法書士や弁護士に依頼して各金融機関に照会をかけてもらってもいいでしょう。

口座を特定できたら残高を確認します。ネット銀行や通帳を発行しない銀行も増えています。記帳できず残高が確認できない場合は、預け先の金融機関に残高証明書を発行してもらいましょう。

下記の書類を揃えて、相続人が金融機関の窓口に出向いて手続きをします。

  • 被相続人の死亡の事実がわかる戸籍謄本など
  • 相続人であることが確認できる戸籍謄本など
  • 相続人本人であることが確認できる本人確認書類(運転免許証など)
  • 請求者の実印と印鑑証明書
  • 残高証明書発行依頼書

請求から1~2週間程度で残高証明書を受け取れます。

注意点としては、必ずすべての預金口座を見つけられるとは限らない点です。日本全国の銀行口座を一括で調べられるシステムは存在しません。司法書士・弁護士であっても日本全国の全ての銀行に照会をかけることは現実的ではないため100%見つけられるとは限りません。

不動産の調査方法

不動産を調査する場合も、まずは遺品を調査します。

不動産の売買契約書、登記をした際に発行される登記識別情報(登記済権利書)、固定資産税の通知書(課税通知書)など、不動産に関する書類が保管されていないか探してみましょう。

これらの書類が見つからない場合は、不動産が存在する地域の役所で、名寄帳を申請すれば、調査が可能です。これには、不動産の所有者の氏名・住所、不動産の地番などの詳細が記載されています。

注意点としては、名寄帳は市区町村単位で作成されているため、複数の場所に不動産がある場合はそれぞれの役所に申請しなくてはいけません。

また、不動産の所在地が分かっているのであれば、法務局かインターネットで「登記情報提供サービス」を利用すれば登記情報を調べられます。

株式の調査方法

株式を調査する場合も、まずは遺品を調査します。

上場株式や投資信託、証券会社から毎年送付される年間取引報告書や株券など、株式に関する書類が無いか探してみましょう。

見つからない場合は、証券保管振替機構(通称:ほふり)に開示請求することで、被相続人が預託していた証券会社を調べられます。ただし、この開示請求で調べられるのはあくまでも証券会社名までなので、口座などの詳細はさらに証券会社に問い合わせる必要があります。

注意点としては、非上場株を保有していた場合は、証券保管振替機構ではわからない点です。例えば、ベンチャー企業に出資していたり、非上場株を保有していたりした場合は見つけるのが難しいかもしれません。

その他、動産の調査方法

動産の代表的なものとして「自動車」「貴金属」「芸術品」が挙げられます。これらは目に見えるため、自宅や貸金庫など、比較的探しやすいかと思います。

そして、これらに財産的な価値がある場合は相続財産に含まれます。換金価値のありそうな物は、取り扱い業者に鑑定を依頼するなど、評価額を調査しましょう。

借金の調査方法

借金もマイナスの財産として相続の対象になります。

遺品の中に借用書や督促状など、借金に関する書面がないか調べます。また、銀行口座から毎月決まった金額が引き落とされているのであれば、クレジットカードや借金の引き落としの可能性があるため、引き落とし先を確認してみましょう。

書類などが見つからない場合は、信用情報機関に問い合わせてみましょう。ここには、消費者金融、クレジットカード、銀行ローンなど金融機関からの借入はすべて記録されています。信用情報機関には、JICC、CIC、全国銀行協会の3つがありますので、それぞれに問い合わせてみましょう。

注意点としては、信用情報機関に登録されているのは、金融会社からの借入のみです。闇金などの非正規の貸金業者や個人間の借入は記載されていません。また、未納の税金、商品代金などもここには記録されません。

みなし相続財産

みなし相続財産は、民法上は相続財産ではないものの、相続税の課税対象になるため併せて調査をしておきましょう。

みなし相続財産で代表的なのが生命保険の保険金です。遺品の中に保険証券が無い場合は、銀行の引き落とし履歴に保険会社がないか確認してみましょう。もしくは心当たりのある保険会社に照会するしかありません。

もう一つ代表的なのが、死亡退職金です。これはお勤めの会社に問い合わせれば確認できます。

財産調査を怠ると、どんなトラブルが起こるのか

財産調査を怠ると、どんなトラブルが起こるのか

どれだけ財産があるのか把握できないと、「何を」「どのように」分ければいいのか、遺産分割の話し合いが難航してしまいます。

また、他にもトラブルに発展するケースがあります。

相続税の納付額が計算できない

財産調査を行わないと、相続税の課税対象かどうかを把握できません。

適切な納付額がわからず、過少申告になっていた場合は過少申告加算税が、申告期限内に申告できないと無申告加算税が、さらに相続税を納付せず延滞した場合は、その日数に応じて延滞税が課せられることがあります。

予期せぬ借金を背負ってしまう

相続ではマイナスの財産も引き継がれます。財産の調査を怠り、借金があることを気づかずに相続してしまうと、相続人に返済義務が発生します。

プラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きい場合は、相続放棄を選択することもできます。しかし、一度相続した後に相続放棄をすることはできません。借金の金額によっては相続人が財産を失うことにもなりかねません。

マイナスの財産についてもしっかりと調査し、相続にメリットがあるのか、しっかり把握することが大切です。

相続財産に借金が含まれていた場合の対処方法はこちらの記事を参照してください。

ご家族のために遺言書を残して欲しい

ご家族のために遺言書を残して欲しい

ここまでご説明したとおり、相続人が亡くなった方の財産を調査するのは容易ではありません。司法書士・弁護士に依頼したとしても、すべての財産を100%見つけられるとは限りません。

後から財産が見つかると、遺産分割協議をやり直したり、相続税の過少申告加算税が課せられたりと、トラブルの元になります。

そのため、遺言書の存在が重要になります。ここでは一般的によく使われる自筆証書遺言と公正証書遺言について解説します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は遺言者が自筆で書いた遺言書です。パソコンでの作成や代筆は認められません。お金をかけずに気軽に作成できる反面、様式の不備で無効になってしまうリスクがあるため、慎重に作成しましょう。

自筆証書遺言に財産目録を添付することができるため、財産を一覧にして遺しておくといいでしょう。なお、財産目録に関しては代筆やパソコンでの作成が認められています。

公正証書遺言

公証役場の公証人が作成する遺言書です。ご自身で決めた遺言内容を元に、公証人と打ち合わせを行い作成します。法律のプロが作成しますので、様式の不備によって遺言書が無効になるリスクがなく安心です。

公正証書遺言にも財産目録を添付することができるため、一緒に作成しておきましょう。

遺言書の書き方については下記の記事を参照してください。

まとめ

相続財産の調査は、まずは遺品の中から書面や契約書などの手がかりを探しましょう。見つからない場合は、財産が残されていそうな金融機関や市町村に照会をかけてみましょう。

この時に、闇雲に調査するのではなく、可能性の高いところから、探しやすい財産から優先順位をつけて探していきましょう

しかし、残されたご家族が全ての財産を探し出すのは困難です。また、時間と労力もかかります。財産調査に漏れがあると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、生前に遺言書と財産目録を残しておかれるのが望ましいです。

財産調査・遺言書の作成など、相続でお困りの方はアヴァンス法務事務所にご相談下さい。

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